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超国家主義者に、トイレで会う [歴史雑感なぞ]

最近、蓑田胸喜という名前を知った。

岩波書店から出版された『岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年』にその名が出ていた。その解説には、次のようにある。(強調表示は環虚洞による)

岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年

岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/01/26
  • メディア: 単行本


第1巻には、1898(明治31)年から1935(昭和10)年までに書かれたものを収録した。岩波茂雄にとって、書店創業前から出版活動の開始、定着をへて、さまざまな全集、講座、そして岩波文庫の創刊などにより大きく飛躍をとげ、やがて、言論・出版統制に直面する時期にあたる。民間の右翼思想家であった蓑田胸喜によって岩波茂雄が攻撃の対象となるのもこの最後の時期である。蓑田への反論を試みたのち、岩波は数ヶ月に及ぶ海外渡航の旅に出る。そうした紀行の記録が本巻の終盤に収められている。帰国ののち、岩波茂雄ならびに岩波書店はより厳しい時代をへて、敗戦を迎えることになる

解説の記述から、蓑田という人物は、よっぽどタイヘンな人物であったろうことはまちがいないと思っていたが、その後、くわしく調べることなくいた。そうしたら、トイレで出会ったのである。

対話の秘訣 話のタネになる本

対話の秘訣 話のタネになる本

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 光文書院
  • 発売日: 1971
  • メディア: 単行本


トイレに、『話のタネになる本(光文書院 昭和47年)』という本を置いてある。多様なジャンルの短い記事が多数おさめられていて、たいへんオモシロイ本なのだが、久々に開いたら、蓑田胸喜が出てきた。そこには「超国家主義者」と紹介されている。

やはりタイヘンな人物である。 以下に引用してみる。

************

超国家主義者蓑田胸喜の悲劇

「ヒットラーの『わが闘争』の中にはアリアン民族のみが優秀と書いてあるが、実にけしからん、大和民族の優秀性を知らないのか」と度々ドイツ大使館へやって来てねじこむ中年の学者風の日本人があり、大使館員もほとほと手こずっていました。そしてある日とうとうオットー大使が応接に出て「そのうち総統から訂正がくると思うから」といってなだめてお引とりを願ったら、それ以後来なくなったそうです。太平洋戦争の始まる少し前の話で、その日本人こそ「原理日本社」を主宰し、共産主義退治の名のもとに、すさまじい言論の暴力をふるった蓑田胸喜(みのたむねき/ 世人は狂気に通じさせてキョウキと読んだ)です。

蓑田は東大の宗教学科の出身ですが、在学当時から国家主義に興味をもち、筧克彦博士の神ながらの道に傾倒して、ついに天皇神権説を核心とする超国家思想を抱くに至りました。大学を出てしばらく私大の教授をしていましたが、山梨県の大地主で右翼歌人の三井甲之の思想に共鳴して教授生活から足をあらい、彼と共に大正14年に「原理日本社」を創立します。以後そこで刊行する出版物により自由主義的立場をとる大学教授、学者、言論人等の著書を攻撃し、軍部に牛耳られていた当時の政府はそれを利用して多くの有能な大学教授等を失脚させました。天皇機関説の美濃部達吉博士、古事記研究の津田左右吉博士、刑法研究の滝川幸辰京大教授などはその最も代表的な被害者であります。

この蓑田はアメリカのマッカーシー上院議員と似ていますが、マ(ッカーシー上院)議員がそれを自分の政治生命に私用したのに反し、蓑田のは自分の狂信的な信念にじゅん(殉)じて私欲のなかっただけに、その末路はあわれでした。太平洋戦争下では統制経済の失敗を非難し東条内閣打倒の指導をしたので軍部からもにらまれ、神経衰弱のこうじるまま昭和19年郷里熊本に帰ります。そして終戦の翌21年1月末い死(縊死)をとげました。52歳 (P534)

****引用ここまで****

さいごに当該ブログ過去記事から

「ファシズム体制」速成の実績、過去にアリ
(保坂正康「昭和史のかたち」から) 
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2013-05-15

『岩波茂雄文集 第1巻 1898-1935年』 岩波書店
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2017-04-06

蓑田胸喜(ウィキペディア)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%93%91%E7%94%B0%E8%83%B8%E5%96%9C

ネット検索していたら、以下の本がヒットした。この4月に刊行されている。

書籍・帯にある言葉がすさまじい。
「たった半年で日本は暗転した」


「天皇機関説」事件 (集英社新書)

「天皇機関説」事件 (集英社新書)

  • 作者: 山崎 雅弘
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/04/14
  • メディア: 新書


その見出しに、
「美濃部攻撃の陰の仕掛け人・蓑田胸喜」とある。

上記書籍について半藤一利【推薦! 】とある。
作家・半藤一利(『日本のいちばん長い日』『昭和史1926-1945』著者)
そのコメントは「これは昭和史の重要な分岐点だ。    現在と酷似する状況に慄然とする」


以下は、戦時、アメリカの思想弾圧下を生きぬいた(映画『ローマの休日』の脚本を書いた)作家の評伝

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 ハリウッド映画の名作を残した脚本家の伝記小説

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 ハリウッド映画の名作を残した脚本家の伝記小説

  • 作者: ブルース・クック
  • 出版社/メーカー: 世界文化社
  • 発売日: 2016/07/02
  • メディア: 単行本



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