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雨の上は、満月

本降りの雨になっている。気温も冬に逆戻りだ。これで、花も散ってしまうにちがいない。

きのうは、満開の桜のしたを通りぬけ、さらには遠くから眺めて、春をたのしんだ。川堤にそって桜がうえつけてあり、そのしたには、ずっと菜の花も咲いている。さくら祭りのちょうちんがぶらさがって、そこに寄進した方の名が書いてある。ウォーキング、イヌの散歩の人たちとすれ違う。見しらぬ顔にあたまをさげる。笑顔でこたえる。風もなく、日ざしもあたたかく、みな気持ちにゆとりがみえた。

歩きながら見る桜は、光のかげんで、白っぽく見えたり、さくら色に見えたりした。

光の反射したものをとらえて、われわれは「色」として識別するらしい。最近、「植物が好きな色は何か」という問題を考えた。ある本にそのように出ていたのである。葉っぱの色を見て、その問いに「ミドリ色」と答えるのは、マチガイであるという。なぜなら、植物はミドリ色の光を受け入れるのを拒んで、反射しているので、人の目にその葉がミドリ色に見える。つまり、植物は、ミドリ色が嫌いなのだ・・という話だった。どこで読んだか忘れたが、オモシロイ話である。そうして考えると、実際に見えている色の補色にあたるのが、その物自体のホントウの色なのかもしれない。植物のホントウの色は、じつはアカ・・・。

それにしても、植物がアカ色に見えたなら、たいへん辛い世の中になるように思う。以前、聞いた話だが、一面「白」の世界で生活している南極越冬隊の方が、「日本に帰ってなによりも見たいのは美人よりもみどり」と言っていた。植物の立場からすると、自分のきらいな色をもって、認知され、しかも、それが何よりも好まれていることを考えると複雑な気分になるにちがいない。

植物を擬人化して、「好き」「嫌い」「複雑」だのを問題にしているが、実際のところ、人間であれば、たえられないことのように思う。外見から「あなたは、ミドリですね」「大好きです」と言われるたびに、「いや、自分はアカなんです。ホントウは!」という内面の圧力をいつも感じることになるだろう。性同一性障害の方たちが、外見は「男」であるにもかかわらず、内面は「女」であったり、見た目は「女」であるのに、「オレは男だ」と自分を認知している場合もそれと同じだろうか。

なにはともあれ、色が世界にあるというのは、世界が色彩に満ちているというのは、有難いことだ。色のない世界など想像もできない。世界全体が、白一色であったなら、どれほど光かがやいていても、さぞかし味気なくつまらない生活となることだろう。

人間の脳は、現実と仮想を区別できないという話を聞く。植物のみどりを見ると、ナチュラル・キラー細胞が活性されるというが、それは文字通りのみどりでなくてもいい。写真でも、脳は文字通りのみどりを見たのと同じように反応するのだという。そう考えると、想像力の大切さが分かる。今日のような雨降りの日で、寒く、ものわびしい気持ちのときに、想像力をもちいて、さくら満開の花のしたであたたかい日ざしのなかの散策を楽しむこともできるというわけだ。

去年、富士山を見るつもりで、御殿場線に乗った。たぶん、晴れていれば、見えるはずの富士がカゲもカタチもない。そうこうするうちに沼津に着いてしまい、しようがないので海鮮丼を食べて帰ってきたというしまらない旅をした。

山岡鉄舟の有名な歌がある。「晴れてよし曇りてもよし富士の山 もとの姿は変らざりけり」。もしかすると、まったくの曇り空で富士の見えないなかで、詠んだ歌かもしれない。それでも、鉄舟には、富士がたしかに見えていた。

今宵、満月。たぶん雨は降り続く。月の片鱗も地上に届かない。それでも、雨の上は、満月。地上から見えないだけ。ほんとうなら、月あかりのもと、サクラの花見をたのしむ機会となったであろうに。残念ではあるが、そこは想像力をめぐらせたい・・・。


まんげつのよるに
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2008-03-21-2


補色
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A3%9C%E8%89%B2

性同一性障害
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%80%A7%E5%90%8C%E4%B8%80%E6%80%A7%E9%9A%9C%E5%AE%B3


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