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「八犬伝」」のエッセンスを画像にすると・・ [本・書評]


Life and Death of Yukio Mishima

Life and Death of Yukio Mishima

  • 作者: Henry Scott-Stokes
  • 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux
  • メディア: ペーパーバック



「八犬伝」を読みつつずっと感じていたことでもあるのだが、「八犬伝」のエッセンスを示せと言われたなら、ためらわず、当方はこれを示す。

たぶん細江 英公撮影によるものではないかと思う。「七生報国」のハチマキをしめ、愛刀(関孫六)を手にした三島由紀夫の写真である。


当方は、上記書籍を高校時代、辞書を片手に、読もうと挑戦したが、1ページ目でダウンした。それでも、そのとき、覚えた言葉が一つある。"commit suicide "「自殺する」)である・・


「八犬伝」を見ていくと、自決(自害)の事例が多く登場する。たとえば、伏姫のそれ、金碗八 郎のそれ、犬塚信乃 の父親:番作のそれであり、犬村大角の妻:ひなきぬのそれである。また、他を利するために自らの命をすすんで投げうった事例が出てくる。たとえば、信乃の身代わりとなって「首」を文字通り差し出した房八のそれである。物語中、犬(の与四郎)でさえ、介錯がしやすいようにとすすんで「首」を伸ばす。

また、家伝の刀がいろいろ登場する。「村雨丸」、「小篠」 、「落葉」、「桐一文字」、「木天蓼丸(わたたび)」などである。それらの由緒来歴が記されつつ、刀は物語中重要な役割を果たす。


日本文化を分析して著名な書籍に『菊と刀』があるが、「八犬伝」から読み取れる日本文化の型は「首と刀」ということになるかもしれない。

「首」は現在から未来へのベクトルとなり、「刀」は、過去から現在・将来へと続くベクトルとなっている。将来のために首(いのち)は懸けられ、刀はいのちの重みを吸い取りながら将来の世代へと託されていく。


菊と刀 (講談社学術文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)

  • 作者: ルース・ベネディクト
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/05/11
  • メディア: 文庫



ところで、三島の首を切り放った関孫六は今、誰の手元にあるのだろう。それを、手にして光にかざしたならどんな気分になるだろうか、と思う。そこには、三島のいのちが宿っているように感じられ、そのいのち:精神を継承せねばならぬような気分に襲われるのではないかと思われもする。


最近、上記画像を用いた書籍の宣伝広告が新聞紙上に何度か取りあげられているのを見た。小室直樹著「三島由紀夫が復活する」である。ソ連崩壊を予言し、「ノーベル賞を複数もらってもおかしくない」と橋爪大三郎の言う大先生の著作である。目を通す価値はあるように思う。


三島由紀夫が復活する

三島由紀夫が復活する

  • 作者: 小室 直樹
  • 出版社/メーカー: 毎日ワンズ
  • 発売日: 2002/11
  • メディア: 単行本



三島は、ハチマキに示した以上に、「七」回どころか、自決後ずっと、憲法9条・改憲論議が取りあげられ話題となるたびに復活してきたように当方は思う。三島は自衛隊を憲法違反者としての後ろ暗い存在としてではなく、雄々しく明るい存在とすることを願っていた。

三島には、馬琴の「椿説弓張月」を歌舞伎化した作品もある。三島が「八犬伝」を見ていないことなどありえない。三島は、「八犬伝」からナニを読み取っていたであろうか。

「八犬伝」には、里見の家と管領家との間の戦いが出てくる。管領方についた関東の諸国が大挙して里見に攻めよせてくる時に、里見の殿様と八犬士がとった敵(管領方)に対する態度は、基本的に「殺さない」生け捕りにするというものであった。それが実行され、そうした中で、自他共にいのちを落とすものも出たが、それらの多くは伏姫の秘薬によって復活させられ、秘薬の効果の及ばない者たちは、復活に値しない者という扱いを受けていた。生け捕りにされた者たちは敬意をもって厚く遇され反省を促され所領を返されるという結末が示されていた。

そんな物語を読んでいくと、どうも、三島は、里見の家のように自衛隊を、正義と平和のための軍隊として、死んだ後ろ暗い立場から生き返らせようとしていたのではないかと思われもする。

三島の死と、その死に方に関しては、コンプレックスの裏返しだの自己顕示だのいろいろ言われてきたが、三島の生前の文章を見ていくと、そんな批判は十分承知の上での行動であったことがわかる。三島は自分の「愚行」をだれよりもよく承知し熟知していたのである。

自衛隊のことをだいぶ書いたので、ざっと読まれた方は、当方を改憲論者のように、あるいは、自衛隊擁護論者のように思われる方もいるかもしれない。が、実のところ、そうではない。

ただ、言いたいのは、あくまでも“総体としての日本文化”のことなのである。三島も、結局、死を賭して言いたかったのはそのことではなかろうかと、当方は思うのである。

要するに、アメリカナイズされ、「緑色の蛇」(ドル紙幣のこと;徳岡孝夫の「五衰の人」にその記述がある)の毒に酔い、のたうちまわる日本の在り様を憂い、日本の美学「首と刀」を守るため、三島は、自らのいのち(首)を「捨て石」としたのだと・・・


ところで、三島の孫六は、今、どこに、あるのだろう・・

聞くところによれば、孫六のニセモノを三島は掴まされていたという話もあるようなのだが・・、それも三島は知っていたのだろうか・・、

いずれにしろ、たとえ孫六の贋物であったにしろ、三島の血を吸いとった刀は、三島事件のゆえに立派な由緒来歴を持ったことになる。

刀の名は「魅死魔」ということにでもなろうか・・・


http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2010-07-06

http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2010-07-02

ウィキペディア「三島事件」の項
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%B3%B6%E4%BA%8B%E4%BB%B6


馬琴 椿説弓張月の世界 ―半月の陰を追う―

馬琴 椿説弓張月の世界 ―半月の陰を追う―

  • 作者: 朝倉瑠嶺子
  • 出版社/メーカー: 八木書店
  • 発売日: 2009/11/30
  • メディア: 単行本



五衰の人―三島由紀夫私記 (文春文庫)

五衰の人―三島由紀夫私記 (文春文庫)

  • 作者: 徳岡 孝夫
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1999/11
  • メディア: 文庫



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